どんなときでもぶれずに、そしてしやなかに生きる長谷川京子さん。大人女性の憧れである彼女が綴る、食と暮らしのエトセトラ『長谷川京子 おいしい記録』(集英社)には、自分をごきげんにするためのヒントがたくさん。
毎日のように「今日もごはん、めんどうくさいけど、手を抜きたくない」なんて葛藤する働く女性へ送る、豊かさへの手がかりを、長谷川さんに聞きました。

出典: by.S編集部撮影
多忙で時間がない毎日。手をかけずに自分を満足させる、おうちごはん
自分のために、そして家族のために、もう10年以上ずっとごはんを作り続けている長谷川さん。
かといって、作ったことのないチャレンジングなレシピに手を出すには、時間もエネルギーも足りない毎日。幸先のよいハッピーな一日を始めるための朝ごはんも、有終の美を飾りたい仕事後の晩ごはんも、なるべく手をかけずに豊かにしたい。そんなとき長谷川さんが頼るのは、まずは食器。
2、3品のおかずを、食器の系統を合わせてセッティングするだけで、気分がプラスになりますよね。漆や、荒く豪快な作りの大皿の和食器が好きなんですが、そういう大皿にポンと盛るだけで、食卓がなんとなく形になります。
余裕があれば、おぼんごはんもよさそう。おぼんに、ごはんと味噌汁、副菜を乗せて食べると、心が整う感じがします。
コメント: 長谷川京子さん

出典: by.S編集部撮影
そしてお味は、持つべきものは、ベストパートナーな調味料。サッと気軽に使うだけで、味のランクをあげてくれるから、長谷川さんも重宝している。
ろく助本舗の「ろく助塩」は、塩おにぎりにするだけで十分に味に深みが出るし、欠かせないマストな調味料。アルドイノのオリーブオイルやカルピス社の特選バターも長く使っていますし、ごま油はことあるごとに使っていますね。
コメント: 長谷川京子さん
特に長谷川さんを唸らせるのは、チャツネ。
いい仕事をしてくれるんですよ。なんてことのないカレーやミートソースでも、最後に味を締めてくれるんです。ごはんの格を引き上げてくれる存在です。
コメント: 長谷川京子さん
ストックできる“味変食材”にも、助けられているそう。
「最後になにかひとつ、足りないピースを埋めたいな…」という漠然とした物足りなさを感じたときは、たいていみょうがや万能ねぎで解決できます。サッと散らすだけで、味に変化が出るんですよね。
コメント: 長谷川京子さん
食器で視覚を、調味料や薬味で味覚を。あとひとつ、旬の食材を使うだけで、心身が豊かに満ちる。
旬のものを旬の時期にいただくことが大好きなんです。そのときの季節や気候が生み出した食物は、絶対に体にいいはずですしね。
たとえば、春の野菜には苦味がありますが、子どもたちにも「美味しいと思わなくても、食べてみて」とすすめています。「これこそが春の食べ物」だと、知ってもらいたいんです。
コメント: 長谷川京子さん
夜ごはんの支度までの「自分時間」

出典: by.S編集部撮影
仕事に追われ、「自分時間」が疎かになりがちな働く女性。いわゆるライフワークバランスをとるのって、ほんとうに難しい。「子どものことも、仕事のことも、自分のこともやって楽しみたい。わたしは時間の使い方が貪欲かもしれません」と話す長谷川さんの、とある1日を覗いてみると、ごきげんへの近道がふんだん。
子どもが登校したあと、10時から11時の間に、1回目か2回目の上映を目指して映画館に行きます。映画を観ることも目的のひとつですが、わたしのいちばんのお目当てはポップコーン。塩バターたっぷりのポップコーンをお昼ごはんがわりにできる、シネコン系に足を運びます。
その前に、朝からヨガをやってもいいかもしれません。ただ、疲れ果てて映画館で寝入ってしまうので、映画とは相性がよくないのかも(笑)。
コメント: 長谷川京子さん
映画のあとは、カフェで一息つきつつ原稿を執筆。適度な喧騒に包まれたほうが、集中力がアップする。そして近所のスーパーで夕食の材料を買い、「自分時間」は一区切り。
撮影などで1日中仕事の日も、少しの時間でも「家での生活と切り離した自分時間」を作るように心がけています。そうすると、帰宅後、心身がフラットな状態になれるんです。
コメント: 長谷川京子さん
白でも黒でもない。「グレー」に学ぶことがある

出典: by.S編集部撮影
自分の心身の健康を最優先することが、家族や仕事など、周辺の豊かさにつながることを知っている長谷川さん。ここにたどり着くまでに、「やめたこと」がある。
他人と比べることと、頑張ることをやめました。かつてのわたしはストイックで、どんどん課題を作ってしまうタイプでした。ですがいまは、「ここまで頑張ったんだからいいじゃない」と、自分を認めてあげるようにしています。
コメント: 長谷川京子さん
白黒つけていたいストイックの向こう側に、見えてきたのは「グレー」の境地だった。
子育て中に白や黒にしようとしても、なにかしらアクシデントが起きてしまう。自分が頑張ったって思い通りにならないことがあるんだな、と思い知ったんです。それこそが、わかりやすい成果が得られる白でも黒でもない「グレー」。
20歳の自分が聞いたら「年をとっていろんなことを諦めたの?」と呆れるかもしれません。でも、実はその「グレー」にこそ学ぶことがあり、人生の旨味があるのかなと、わたしは思っています。
コメント: 長谷川京子さん
清濁併せ呑むからこそ、成熟へ向かう日々の生活。気張らなくても、自分をごきげんにする方法は、いたるところにあふれていることを、長谷川さんは教えてくれる。

出典: by.S編集部撮影
『長谷川京子 おいしい記録』(集英社)
2014年冬から2021年夏まで、7年半に渡り毎月書き続けた雑誌「LEE」のエッセイを書籍化した単行本が、9月2日に発売。女優、モデルの顔とは違う、“母としての素顔”が覗く1冊。ユーモア溢れる文章で綴られる飾らない本音から、美しさにうっとりするカラーグラビアまで、長谷川さんの魅力が凝縮。
photo/久保田智
飽きますよね、自分の味に。毎日ごはんを作っていると、どうしても単調になってしまいます。
コメント: 長谷川京子さん