
吉原遊女のテクニック、恋文や夜這い文化など…日本の歴史にはエロスが溢れている。
故きを温ねて新しきを知る—
日本における知られざる恋やSEXの歴史・文化を紐解き、そこから得られる学びや新しい知識を見つけ出していく新連載“いにしえ女の夜枕ばなし”。
第1回目は「遊女の指切り」から紐解く、恋愛テクニックをカストリ書房店主の渡辺豪氏の解説のもとにご紹介。
さあby.S淑女のみなさまがた、エロスを覚醒しておくんなんし。
遊女に学ぶ手練手管な恋のテクニック
✓惚れたアナタにだけ…【指切り】で愛を伝える
遊女にとって代表的な愛のアピールとも言える【指切り】。遊女が自分の小指の第1関節を切り落として客に渡す行為なのだとか。あくまでテクニック(手練手管)なので、死体から切り落とした指や、本物に似せた模型を使っていたのだそう。
✓神仏に永遠の愛を誓う【起請文】
遊びの場である遊郭ですが、遊女が遊びを超えて「惚れてしまった」とお客に思い込ませることが、男性の心をつなぎ止めるテクニックだった模様。男に自分の愛情を誓う証拠(心中)を立てること=“心中立て”をしたわけだけれど、その代表的な手法のひとつが【起請文】だったんですって。
遊廓は、本来「遊び」の場だったが、遊びの関係性を超えて、遊女は、自分が惚れたと相手の男に思いこませることが、客の心をつなぎ止めるテクニックでした。
起請文とは神仏に自分の心を誓う誓詞のこと。遊女は相手への気持ちが心変わりせず、もし破ればどのような罰が下されても構わないと神仏に誓った。が、あくまでもテクニックであるため、本当に惚れている男には「神々の御ばつをかふむり」と正しく書くが、惚れていない男には「神々の御ばつうをかふむり」と敢えて誤字を交えて書いたそうですよ。
コメント: カストリ書房 店主 渡辺豪氏
“愛”をきちんと伝える。ときには“アピール”も必要
自分の身体を傷つけて相手への愛情を証明する“心中立て”は、現代人にはロマンチックな行為にさえ映りますが、戯作(当時の大衆文学)などフィクションの世界に描かれた行為であって、すべての遊女が行っていたのではありません。一方で【指切り】は“指切りげんまん”の語源とされており、これが本当ならば、現代に伝わるほど江戸のひとには、遊女との関係性が魅力的に映ったのでしょう。
コメント: カストリ書房店主 渡辺豪氏
つきあいが長くなるほど、愛を伝えること(アピール)を忘れてしまいがち。改めて愛を伝えるのが恥ずかしかったり、「言わなくてもわかるでしょ」となってしまったり。
進展しない恋愛やマンネリは、コミュニケーション不足が原因かも。だって男性は察することが苦手なんですもの。ここはひとつ、遊女にあやかり“愛のアピール”をしてみてはいかが?
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今回は“遊女の指切り”を紹介してみたけれど、いかがだったかしら?
by.Sの新連載『いにしえ女の夜枕ばなし』では、今後もいにしえ日本の知られざる恋やSEX文化についてさまざまな切り口で取り上げていく予定。
どうぞお楽しみに。
参考文献『図説 吉原事典 』永井義男(朝日文庫)、『江戸の華 吉原遊廓』(双葉社スーパームック)
取材協力/カストリ書房 店主 渡辺豪
illustration/Kaoll
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駐車場:なし(近在にコインP有)
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惚れた男に自分の愛情を誓う証拠(心中)を立てた。これを「心中立て」という。代表的なものに遊女が自分の小指の第一関節から先を切断して客に渡すというもの。ただしこれもあくまでテクニック(手練手管)であるため、死体から切り落とした指を用いたり、本物に似せた模型などを用いたと言われています。
コメント: カストリ書房 店主 渡辺豪氏