2014年にスタートした、デザイナー天津憂氏が手掛ける「Hanae Mori manuscrit(ハナエモリ マニュスクリ)」。2017年の春夏からウエディングラインも展開し、新世代の女性から大きな支持を集めている。今回はそのウエディングラインと、現代ファッションへの想いを語っていただいた。

出典: 編集部撮影
ハナエモリに受け継がれるエレガンスの精神を礎に、「品・花・凜」を今につなぐ「ハナエモリ マニュスクリ」。デザイナーの天津憂氏は、その思想を大切にしたウエディングラインを2017年春夏コレクションで発表。ブランドアイコンの蝶も舞う、美しいモダンなルックがランウェイを洗練されたエレガンスで彩った。
AIが提案する、ウエディングドレス

出典: Hanae Mori manuscrit
エレガンスでありながら、女性の魅力を極限まで引き立てる、華美になり過ぎないスタイリッシュなデザイン群。甘さを程よく抑え、女性の強さをも感じさせる。
また、最先端テクノロジーをファッションに落とし込む術を得意とする天津氏は、3Dプリンタを用いてヘッドドレスの高精細なレースを表現。2層、3層しながら、立体的に頭へフィットするように生み出した。
さらに、会場には顏認証デジタル・サイネージ・システム「BeeSight 搭載筐体」を設置。個々に似合うウエディングドレスをコーディネートしてくれるなど、新しいコミュニケーションスタイルを実現した。

出典: Hanae Mori manuscrit
AIでさまざまなデータを取り、体型的に着こなしが難しいと敬遠されがちなマーメイドラインのウエディングドレスに、あこがれている日本人女性が意外に多いことを知りました。
僕もマーメイドラインが一番美しいと感じます。これからもAIを活用したロジカルな思考で着るひとの苦手意識を払拭して、着たいものを着ていいと思えるドレスをつくっていきたい
コメント: 天津憂さん
衣食住のひとつファッションは、もっと進化できる

出典: Hanae Mori manuscrit
「ハナエモリ マニュスクリ」を手掛ける一方で、メルセデス・ベンツのユニフォームデザイナーとしても活躍する天津氏。東京モーターショーに参加して改めて感じたのは、現代ファッションの未発展な現状だった。
例えば、車のテクノロジーはものすごい速さで進化しています。けれど洋服は、生きていく上で欠かせない衣・食・住のひとつであるにも関わらず、近年ほとんど発達していません。ミシンや手作業で縫っていくしかないんです
コメント: 天津憂さん
だからこそ、最先端テクノロジーをファッションに溶け込ませる。また、レザーに漆を塗った漆皮のベルト、江戸切子からインスピレーションを受けたモチーフなど、最新技術とは真逆に位置する日本の伝統文化も混ぜ合わせ、化学反応を楽しむ。
そのようなテクニックを取り入れて表現の幅を広げ、ファッションを進化させていきたいと思います
コメント: 天津憂さん
トップメゾンのデザイナーから見た、現代リアルシーンのファッション事情

出典: 編集部撮影
ブランド離れが叫ばれ、ファストファッションの人気が高まっている今のファッションシーンは、トップメゾンのデザイナーの目にはどのように映っているのだろうか?
ファストファッションの台頭により、まわりがおしゃれになっているのを感じます。流行のアイテムが気軽に購入でき、楽しいですよね。
ですがその反面、付加価値がなくなった気もします。アパレルの学校に通っている学生でさえ、東京コレクションに参加しているブランドを知らなかったり、好きなブランドがファストファッションだったりすると、それは少し寂しい。やはり、ハイブランドに興味のあるひとが減っているように思います。
僕たちが学生の頃はハイブランドのコートを着るため、すごく背伸びをしていた気がします。ファストファッションも楽しみつつ、そんな大切なコートを着ることによって、本物も知ってほしいという思いがあります
コメント: 天津憂さん
最後に、アラサー女性へ向けて、ファッションに関するメッセージをいただいた。
新しい洋服を着て街に出ると、気持ちが上がる感覚がありますよね。そういう体験が、日常でもう少し増えると嬉しいです。
例えば、パーティやドレスコードのあるイベントなど、ドレスアップして楽しめる場や機会を、もっとつくっていただきたい。海外に比べて、日本はまだそういう場面が少ないですよね。普段とは違うファッションに身を包み、自分を上げていってもらいたいですね
コメント: 天津憂さん

出典: 編集部撮影
〈Profile〉
天津 憂(あまつ ゆう)
〝ファッションデザイナー”
衣装デザイナーを経て、単身New Yorkへ。
アメリカ最大のコンペGen Artで2年連続グランプリ受賞。
パターンメーカー、デザイナーとして勤め、同時期にセレブの衣装を担当。
帰国後、株式会社212を設立、レディース、メンズともに展開。
Mercedes-Benz Fashion Week TOKYOでDHL Award受賞。
2014年Hanae Mori manuscritデザイナーに就任し、2016年Hanae Moriのクリエイティブディレクターに就任。
MAF展にて内閣総理大臣賞受賞。
もともと衣装デザイナーだったこともあり、その日のためのスペシャルな洋服をつくるのが好き。女性が主役になれる大事な日を手助けしたい、きれいになっていただきたい想いで、ドレスを制作しています
コメント: 天津憂さん