「HANAE MORI(ハナエモリ)」のベースに宿るエレガンスを受け継ぎつつ、ネクストジェネレーションの女性を意識した新しいワードローブ「Hanae Mori manuscrit(ハナエモリ マニュスクリ)」。デザイナーの天津憂(あまつゆう)氏に、2018年春夏コレクションやクリエーションに込められた思想を伺った。

出典: 編集部撮影
研ぎ澄まされたエレガンスに魅せられる、2014年に誕生した「Hanae Mori manuscrit(ハナエモリ マニュスクリ)」。“マニュスクリ(manuscrit)”は「手書き」「原稿」を意味するフランス語。
デザイナー・天津氏の手によって生み出された2018年春夏のコレクションは、ギャザーやラッフルフレアが奏でる躍動的なシルエット、そして、彩り鮮やかな美しい花々のプリント柄が、優雅な余韻を残して脳裏に焼き付く。
テーマは流動・流転、絶え間なく流れ続ける「Flux」

出典: Hanae Mori manuscrit
流動・流転、絶え間なく流れ続けるという「Flux」をテーマにした2018年春夏コレクション。まさに天津氏の思惑通り、シルエットや幻想的なグラフィックが、ステージ上で流れるように展開するショーが繰り広げられた。
グラフィックは“銅板”に映した花々

出典: Hanae Mori manuscrit
ひときわ目を引く美しい花のプリントは、フォトグラファーとフラワーアーティストを交えた、3人の技術と才能が集結することで誕生した。
メインのグラフィックは、湾曲させた銅板に花々を映しています。上部が本物の花で、下部が反射によって映し出された花。コンピュータグラフィックスを用いて加工した柄ではありません。
ハナエモリのアイデンティティである蝶も、部分的に取り入れています。今回のコレクションで使用したカラーは、蝶をイメージした“ユリシス ブルー”と“アグリアス レッド”の2色がメイン。テキスタイルからオリジナルでつくっており、プリントの発色、特に黒のはっきりとした色味の調節にこだわりました
コメント: 天津憂さん

出典: Hanae Mori manuscrit
3Dプリント、漆皮、江戸切子...最先端テクノロジー×日本の伝統文化の融合
最先端のデジタルテクノロジーを駆使しつつ、日本の伝統文化も織り交ぜるという、対極の技術を作品に落とし込むのも、天津氏ならではの表現手法。
これまでに「MAF展」で内閣総理大臣賞に選ばれた3Dプリントのヘッドドレス、レザーに漆を塗った漆皮のベルト、江戸切子からインスピレーションを得た作品など、独特の世界観を披露している。

出典: Hanae Mori manuscrit
ハナエモリのエレガンスを僕なりに表現する中で、デジタルツールを使ってのアウトプットは特徴的だと思います。一方で、やはりメイド・イン・ジャパンも素晴らしい。衣装デザイナーを目指して渡米したことで日本のよさを知り、古くからある日本の文化に興味を持ちました。
それから勉強して、ファッションに伝統工芸品をどう取り込めるのか試行錯誤しながら、 作品に織り込んでいます。そのまま見せるのではなく、新たなものと掛け合わせることで、エイジレスに広く受け止めていただける作品ができるのではないでしょうか
コメント: 天津憂さん
世代を超えて愛されるブランドへ

出典: 編集部撮影
天津氏の斬新な技術と思想で、ハナエモリにフレッシュな風を吹き込んだ新ラインの「ハナエモリ マニュスクリ」。トップメゾンの未来を託された若手デザイナーは、最後にブランドへの想いを語る。
ハナエモリが新たなラインを発表していることを、まだご存じない方が多いかと思います。老舗ブランドだからこそのイメージや、価格の壁を、感じる方もいらっしゃるでしょう。
新ラインでは、あらゆるシーンで活躍する女性にフォーカスしたワードローブを展開していきます。ハンガーにかかっているものを見るだけでなく、ぜひ一度でも羽織っていただき、マニュスクリの世界に触れてもらえると嬉しいです
コメント: 天津憂さん
〈Profile〉
天津 憂(あまつ ゆう)
〝ファッションデザイナー”
衣装デザイナーを経て、単身New Yorkへ。
アメリカ最大のコンペGen Artで2年連続グランプリ受賞。
パターンメーカー、デザイナーとして勤め、同時期にセレブの衣装を担当。
帰国後、株式会社212を設立、レディース、メンズともに展開。
Mercedes-Benz Fashion Week TOKYOでDHL Award受賞。
2014年Hanae Mori manuscritデザイナーに就任し、2016年Hanae Moriのクリエイティブディレクターに就任。
MAF展にて内閣総理大臣賞受賞。
私は一度きりのランウェイに思いを込めて表現する緊張感が好きで、そこにストーリー性を持たせたい。今回は“美しく咲き乱れる花々がやがて静かに土へと還り、また新たに生命が宿り息吹に触れる”というストーリーがあります。
序盤は色彩表現ではなくディティールで見せ、そして、徐々にプリントを施したスタイルに移っていき、最終的にFlux Flower(フラックスフラワー)プリントで会場に大きな花が 咲き乱れたようにランウェイを魅せる。
音楽も前半は打ち込みを入れていますが、プリントを使ったルックからはピアノのソロに切り替え、エレガンスな空間を演出しています。
また、デザインは僕が得意とするパターン的なテクニックを取り入れ、ギャザーやラッフルフレアによる、流れるようなドレープを表現。ハンガーに洋服がかかっている状態だけでなく、着用したときの布の動きや表情も意識してつくっています
コメント: 天津憂さん